いわきFCとは?

いわきFCは、福島県いわき市をホームタウンとするプロサッカークラブです。東日本大震災からの復興を願い、2012年に「東北にルーツを持つ世界で勝てるクラブ」をビジョンに掲げて設立されました。独自のフィジカルトレーニングを基盤としたプレースタイルと、地域に深く根差した活動で知られ、短期間でアマチュアリーグからJリーグへと駆け上がった異色のクラブとして注目を集めています。

設立からJリーグ参入までの道のり

いわきFCの歴史は、東日本大震災からの復興という強い使命感から始まりました。2011年3月11日に発生した未曾有の大震災は、いわき市を含む福島県浜通り地方に甚大な被害をもたらしました。その復興をスポーツの力で支援しようと、株式会社ドーム(当時、スポーツ用品ブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店)が立ち上がり、2012年、いわきFCが創設されました。当初は福島県社会人サッカーリーグ4部からのスタートでした。

「フィジカルモンスター」の誕生と育成

クラブ設立当初から、いわきFCは独自の育成哲学を掲げていました。それが「魂の息吹く限り」というスローガンのもと、世界で勝つためのフィジカルを徹底的に鍛え上げるというものです。一般的な日本人選手に不足しているとされる身体能力、特に筋力や持久力に着目し、アンダーアーマーの最新スポーツ科学に基づいた専門的なトレーニングを導入。その結果、他を圧倒するフィジカルを持つ選手集団は、いつしか「フィジカルモンスター」と呼ばれるようになりました。これは単なる力自慢ではなく、90分間走り切る運動量と、どの局面でも負けない強靭な肉体、そして揺るぎない精神力を兼ね備えることを目指しています。

地域リーグからJFLへの昇格

いわきFCは、その独自の哲学と圧倒的なフィジカルを武器に、瞬く間にアマチュアリーグを駆け上がっていきました。2013年には福島県社会人サッカーリーグ3部優勝、2014年には同2部優勝、2015年には同1部優勝を果たし、着実にカテゴリーを上げていきました。そして2016年には東北社会人サッカーリーグ1部に昇格し、初年度で優勝。同年の全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2016でも優勝を飾り、念願の日本フットボールリーグ(JFL)昇格を決めました。この短期間での快進撃は、全国のサッカーファンに強いインパクトを与えました。

JFLでの戦いとJ3ライセンス取得

2017年からJFLに参入したいわきFCは、プロクラブとしての基盤を固めながら、Jリーグ昇格を目指しました。JFLでは初年度から優勝争いに加わるなど、その実力を示しました。そして2019年にはJ3リーグへの参入条件となるJ3ライセンスを取得。2020年にはJFLで7位、2021年にはJFLで優勝を果たし、Jリーグ昇格への道を切り拓きました。このJFL優勝が決定打となり、2022年シーズンからのJ3リーグ参入が決定。クラブ創設からわずか10年というスピードでのJリーグ参入は、いわきFCの計画性と、揺るぎないビジョンの成果と言えるでしょう。

クラブの理念と特徴

いわきFCは、ただ勝利を目指すだけでなく、その活動の全てに明確な理念と哲学が貫かれています。

「東北にルーツを持つ世界で勝てるクラブ」

いわきFCのクラブビジョンは「東北にルーツを持つ世界で勝てるクラブをつくる」です。これは、東日本大震災からの復興という原点を忘れず、福島県いわき市から世界に通用するクラブ、そして選手を輩出するという高い志を示しています。地域に貢献し、地域の誇りとなる存在であり続けること、そして世界の舞台で戦えるレベルを目指すことが、クラブの根幹にあります。

フィジカルを重視する独自のスタイル

前述の通り、いわきFCの最大の特長は、その徹底したフィジカル重視のプレースタイルです。単に筋肉を鍛えるだけでなく、科学的なデータに基づいたトレーニング、栄養管理、リカバリーの全てを包括的にデザインし、選手一人ひとりのパフォーマンスを最大限に引き出しています。これにより、90分間を通して強度の高いプレーを維持し、相手を圧倒する運動量と球際での強さで試合を支配することを目指します。攻撃では縦への速い展開と前線からのハイプレス、守備では組織的な連動と素早い切り替えを重視し、現代サッカーのトレンドにも合致したアグレッシブなサッカーを展開します。

地域密着とファン・サポーターとの関係

いわきFCは「復興」を掲げて誕生したクラブであるため、地域との繋がりを非常に重視しています。ホームタウン活動を精力的に行い、子どもたちへのサッカー教室や地域イベントへの参加を通じて、市民との交流を深めています。試合開催日には、スタジアムがいわき市のシンボル的な存在となり、地域住民が一堂に会する場を提供しています。ファン・サポーターはクラブの成長を間近で見守り、共に喜び、時には苦難を乗り越える「家族」のような存在として、熱い声援を送っています。

アカデミーと育成組織

「世界で勝てるクラブ」を目指す上で、自前の育成組織の強化も重要な柱となっています。いわきFCは、U-18、U-15、U-12といった各年代のアカデミーを運営し、将来的にトップチームで活躍できる選手、さらには世界で通用する選手を育てることに注力しています。トップチームと同様に、フィジカルを重視したトレーニングを導入しつつ、人間形成にも力を入れ、単にサッカーが上手いだけでなく、社会で活躍できる人材の育成を目指しています。地域の子どもたちに夢と目標を与え、トップチームへと続く明確なキャリアパスを提供しています。

Jリーグでの挑戦と現在

Jリーグ参入を果たしたいわきFCは、新たな舞台でその力を試されています。

J3リーグでの戦いと昇格

2022シーズン、念願のJ3リーグに参入したいわきFCは、その初年度から旋風を巻き起こしました。JFLで培ったフィジカルとアグレッシブなプレースタイルはJ3リーグでも通用し、多くの強豪クラブを相手に堂々たる戦いを展開。特にホームでの戦いでは、熱心なサポーターの声援を背に、連勝を重ねました。その結果、J3リーグ優勝を飾り、わずか1年でJ2リーグへの昇格を決めました。これは、Jリーグ史上初のJ3初年度優勝、そしてJ2昇格という快挙であり、いわきFCの「異例のスピード出世」を象徴する出来事となりました。

J2リーグでの挑戦と現在地

2023シーズンからはJ2リーグの舞台で戦っています。J2リーグはJ3リーグよりもレベルが高く、経験豊富な選手や戦術的な奥行きを持つチームが多く集まる、より厳しいリーグです。いわきFCは、J2でもそのフィジカルを前面に出したサッカーを展開していますが、J2特有の粘り強さや個人の能力の高さに直面する場面も多く、試行錯誤を続けています。J2での戦いを通じて、クラブはさらなる成長を求められており、戦術的な引き出しを増やし、より洗練されたチームを目指しています。現地のサポーターは、チームの勝利を願い、どんな時も熱い応援を送っています。

ホームスタジアム「いわきグリーンフィールド」と「ハワイアンズスタジアムいわき」

いわきFCの主なホームスタジアムは、JFL時代から使用している「いわきグリーンフィールド」と、Jリーグ参入に合わせて整備された「ハワイアンズスタジアムいわき(旧:Jヴィレッジスタジアム)」です。特にハワイアンズスタジアムいわきは、Jリーグ開催基準を満たす設備を備え、快適な観戦環境を提供しています。これらのスタジアムは、いわきFCのホームゲーム開催時には、地域の人々が集い、感動を分かち合う場となっています。試合開催日には、スタジアム周辺で様々なイベントが開催され、地域経済の活性化にも貢献しています。

主なスポンサーとパートナー

いわきFCの活動は、多くの企業や団体の支援によって支えられています。クラブ設立当初から強力なパートナーである株式会社ドームをはじめ、多くの地元企業や全国的な企業がスポンサーとして名を連ねています。これらのパートナーからの支援は、クラブの運営費用だけでなく、アカデミーの活動や地域貢献活動にも活用され、クラブの持続的な成長を可能にしています。いわきFCは、単なるスポーツクラブとしてだけでなく、これらのパートナーと共に地域の発展を目指す「共創」の関係を築いています。

いわきFCが目指す未来

いわきFCは、その歩みを止めることなく、さらなる高みを目指しています。

J1リーグ昇格とその先へ

クラブの究極的な目標の一つは、日本のトップリーグであるJ1リーグへの昇格です。J2リーグでの経験を糧に、選手個々のレベルアップとチーム全体の成熟を図り、着実にJ1昇格の準備を進めています。J1昇格は、単なる目標ではなく、クラブビジョンである「世界で勝てるクラブ」への重要なステップと位置づけられています。将来的には、アジア、そして世界の舞台で戦えるクラブとなることを目指しています。

地域活性化への貢献

いわきFCは、震災復興という原点を忘れず、これからもスポーツを通じて地域活性化に貢献し続けます。クラブの存在が、いわき市のブランドイメージ向上や観光客誘致に繋がり、地域経済に好循環を生み出すことを期待されています。また、子どもたちに夢と希望を与え、スポーツを通じて健全な心身を育む場を提供することも、クラブの重要な役割です。地域に愛され、地域と共に成長するクラブであり続けることを誓っています。

世界で活躍する選手の輩出

いわきFCの育成哲学は、日本の枠を超え、世界で活躍できる選手を育てることにあります。フィジカル面だけでなく、サッカーへの理解度、戦術眼、そして人間性といった多角的な要素を鍛え上げ、世界トップレベルの舞台で通用する選手を輩出することを目指しています。いわきFCから育った選手が、日本代表や海外リーグで活躍する姿は、クラブ、地域、そして日本のサッカー界全体にとって大きな希望となるでしょう。

いわきFCは、東日本大震災からの復興という大いなる使命を背負い、独自のフィロソフィーを貫きながら、Jリーグという舞台で挑戦を続けています。「魂の息吹く限り」戦い抜くその姿勢は、多くの人々に感動と勇気を与えています。これからも、いわきFCの挑戦と成長は、福島県いわき市から日本全国、そして世界へと、その存在感を放ち続けることでしょう。